SKY-HIのライブは何故アンコールがなかったのか
2015年2月24日。
SKY-HI LIVE TOUR 2015「Ride my Limo」in名古屋へ参戦してきた。
ずいぶん時間が経ってしまったが、書きたいと思って下書きで止まっていた記事をやっと仕上げることができたので報告する。
私は元々SKY-HIこと日高光啓さんの所属グループAAAのファンというわけではない。きっかけはwind-s.の橘慶太さんのソロワークにfeat.SKY-HIとして参加していたことで、そこで初めてSKY-HIって誰?とその存在を知ることとなった。
最初は正直言ってどちらかというと声があまり好きなタイプではなかったので、「第一印象から決めていました!」というわけではなかった(スミマセン)。
SKY-HIとしてのメジャーデビューシングル「愛・ブルーム」はTVなどのエアチェックはするもののシングルは未購入。
当然というべきか2014年のソロツアー「Trip of TRICKSTER」はたいして考えもせず行かないことを早々に決めてしまった。
そのツアーファイナルがニコ生で同時中継されると聞き「ラッキー!」と視聴することに。
タイムシフト視聴したそのライブに驚愕。
おう!完全に胸を打たれたよ。
なぜ私は簡単にライブ参戦をあきらめてしまったんだ!ばか!ばか!
…と、その時のライブの話はまた機会があったらということで、このニコ生を観て以来「絶対次のSKY-HIライブは行く!何が何でも行く!」と心に決めた。
その後しばしの沈黙期が過ぎいよいよツアー2015の開催が発表され、ありがたいことに激戦の中チケットを手にすることができた。
そして、初SKY-HIライブに参戦。
SKY-HI自身が話したようにまるで遊園地のアトラクションのような、否応なく盛り上がれる曲もあればアルバムからのおなじみの曲もありハードなラップナンバーありダンスもありで非常にバラエティに富んだセットリストだった。
途中途中のSKY-HIの言葉。
「安心しろ。俺の音楽はいつも君のためにある。君の中にある。」
「劣等感を感じたり羨んだり、でも自分が自分の人生を生きる。それだけで十分だ」→ruleへ
「何回失敗しても何回でも挑戦すればいいということではなく、ここのチャンスは失敗しちゃいけないというポイントがある。受験とかサッカーとか。人生の中で何回かここは外したくないというポイントがある。ここは決めなきゃというポイントを決めてきたから今のSKY-HIがある。皆の前で歌うことができる。」
終盤。
「残すところあと5曲。」
しっかり曲に込めた想いを一つ一つ届けたい。
と、まず3月発売予定の新曲「カミツレベルベット」。
去年秋、一番きつかった時期だったけどバンドのメンバーやDJやここの会場にいるみんなのお蔭で乗り越えられた。
何をもってして乗り越えたのかはっきりと明言はできないのだけど。
辛いこと、例えばはさみ(チョキ)が来たときグーで打ち勝つのではなく、負けたっていいとチョキ(はさみ)ごとパーで包んであげられる優しさ。
その想いがカミツレベルベットに込められている。
「スマイルドロップ」
言わずもがなの名曲。ポジティブでポップな曲調に対しポジティブが一つも入ってない歌詞。
「キミサキ」
ここで歌われている「キミ」とは今目の前にいる君たちのことだと以前話していた。SKY-HIが、ここにいるみんな、私のことをこんなに想っていてくれている。それが伝わってきて心が震える。
そして、聴き足りないんじゃない?と再度「愛・ブルーム」
最後。
「またね」のinstrumentalが流れる中、バックダンサーの最後の紹介。
観客へのSKY-HIの言葉。
元気でいてくれ。生きてくれ。
そうすればまた会うこともできる。
俺はそのためにステージに立ち続ける。
年内にもう一度名古屋に来ます。
次はフルメンバーでバンド連れてきます。
その時のベストは今日より一回りも二回りも大きくなって戻ってくる。
だから、さよならじゃない。「またね」
この「またね」は心に響いた。
歌が終わり、SKY-HIの言葉。
「パソコンからでもイヤホンからでもステージからでもまた会おう。
負けんなよ!
頑張れよ!」
ステージから消えるSKY-HI。
「またね」のアウトロが流れる中、誰もいなくなったステージを見守る観客たち。
そしてとうとうアウトロが終わる。
場内が明るくなり「以上をもちまして本日の公演を終了させていただきます」とアナウンスが流れる。
少しずつ話し声が聞こえ始め、「これで終わり?」「アンコールって…なし?」などと耳に入ってきた。
私は「誰かが“アンコール”するかな?」と、ちょっと待った。
内心、「いや、今日はこれで終わりでしょ」とも思った。
周りが少しずつ動き始め、出口に向かう人ドリンクを求める人ロッカーから荷物を出す人…あ、本当に終わりなんだ。
アンコールないんだ。
アンコールないんだ…とちょっと驚き それでいて、SKY-HIに支えてもらっている安心感がしっかり私の中に根付いていた。
満ち足りた気持ちでいっぱいでライブ会場を出た。
たいていのライブは最後の曲が終わると誰からともなくアンコールが始まる。
「アンコールなしでも良くない?」と思うくらいの良いライブや良い演者の締め言葉だったとしても、必ず誰かがアンコールを始め、周りもまあ何となく「アンコールしてくれるなら観たいよね」と(少なくとも私はたまにこう思ってしまう) それに合わせてアンコールをして、そこまで盛大なアンコールじゃなくてもアンコールが行われる。
ジャニーズのコンサートのようにアンコール前提だとアンコールの声や盛り上がりも半端ないが(最近はジャニーズでもいまいち盛り上がらないアンコールもあるかな)、中途半端なアンコールはいまいち消化不良というか出てきてくれた演者の方にもちょっと申し訳ない気持ちになってしまう。
それが、今日はあまりにも力強い言葉をSKY-HIが残してくれたのでどこからもアンコールがなかった。
むしろ、これでアンコールしたらSKY-HIの言葉の一つ一つを自分の中で消化せず受け取っていないということだ。
そういう意味ではSKY-HIの言葉は確実に、来ていたみんなの心に届いたと言えるだろう。
年内にもう一度来ます!
今度はバンドセット連れてきます!
俺の音楽はいつも君の中にある。君のためにある。
また会おう。
負けんなよ。
がんばれよ。
これらの言葉に強い説得力を感じ、ステージを去ったSKY-HIに背中を押されるように、背中を支えられる感じで、自分の中にSKY-HIの音楽がずしっと根っこが生えて植えつけられた感覚で、観客はアンコールを求めることなく安心してSKY-HIのLimoを後にしたと言えるだろう。
あと一つ、SKY-HIは真実を語っていた。
「何回失敗しても何回でも挑戦すればいいということではない。
“ここは失敗しちゃいけない”というポイントが人生の中で何回かある、それを逃さず決めることだ」
ありきたりな、「夢は信じれば叶う」とか「諦めなければいつかは~」とかそういう理想論や上手くいった人のみ通じる上滑りの言葉ではなく、チャンスはいくらでもあるわけじゃなくここは逃しちゃいけないというポイントがあると話した。
この言葉は、SKY-HIがアルバム『TRICKSTER』制作時に「もうアルバムは完成しないんじゃないか」というネガティブをひっくり返したこと、去年の秋にネガティブで行き詰っていたことなどを乗り越えて、今この名古屋のステージに立つことができているという、SKY-HI自身がこれはと思うポイントを押さえてきた実体験があるからこその言葉だろう。
だから説得力があるし皆の心に入ってくる。
そして、もしその逃しちゃいけないポイントを万が一逃してしまったとしても、そのネガティブはいつかポジティブにひっくり返すことができるとSKY-HIは歌っている。
俺が君の人生をひっくり返してやる。
俺の音楽はいつも君のためにある。
俺は君のためにステージに立ち続ける。
アンコールは要らない。
だってSKY-HIはいつでも私たちの心の中にいるから。
SKY-HIの音楽はいつでも私たちの胸の中で鳴り続ける。
追記
下書きのまま止まっていたこの記事をなぜ仕上げようと思ったのか。
それは、先日公開されたドワンゴジェイピーnewsのSKY-HIインタビュー記事でSKY-HI本人が語っていたから。
以下、記事より抜粋。
「アンコールがなきゃ駄目みたいなのも嫌いだし、だからアンコールはもうしないようにしている。手拍子して「アンコール! 」みたいな、何がどうなってそうなっちゃったんだみたいな、不自然なことがすっごい嫌いなんです。世の中で不自然に感じることって嫌いだから。」