アイドリッシュセブン2nd #5に見る九条天のアイドルとしての覚悟に、元ジャニヲタがひっそり涙した件。

ふとしたきっかけからアニメ「アイドリッシュセブン」を観始めた。

ちょっと時間があったときにたまたま無料で過去の1期の一挙配信をしていて観てみたのだ。

本当に、たまたま、何となく。

 

(以下、盛大にネタバレしているので見たくない人はここで閉じてください)

 

 

 

 

 

 

二次元アイドルが下積みから始まって紆余曲折あって、スターへとのし上がっていく…とまあ、ストーリーなんて見なくてもほぼこんな感じだろうとちょっと舐めてかかっていた。

家庭環境や兄弟間に様々な事情を抱えた高校生から20歳前半までの7人のアイドル候補(男)。

1期は1期ですったもんだあったが登場人物はそれぞれ個性的で本当にこの子たちの成長を見守っているようで、まだまだ成長途中だし解決していない問題も山積みだし、まあこれは2期も観るでしょ。

2ndは本来なら2020年4月クールで放送していたのだが、新型肺炎コロナウイルスの流行のせいでアニメ制作ができず中断。

この10月から改めて3話から放送となった。

言っちゃ悪いが、私にとってはちょうど都合の良い放送延期だった。

 

 

1期からの継続課題となっていたが、主人公のセンター・七瀬陸(ななせりく)は子供の頃から喘息持ちだ。

そのせいで2時間を超えるライブを完遂するのはなかなかに至難の技だ。

#2のライブで、コンサート本編はやり切ったが喘息の発作でアンコールに出ていくことができなかった。

 

数日後、IDOLiSH7アイドリッシュセブン)と陸の双子の兄・九条天(くじょうてん)が所属するグループ・TRIGGER(トリガー)が同日にスタジオライブ収録する機会があったとき、陸は喘息のせいでリハを何度も止めてしまう。

急遽、天が陸の立ち位置に入り、陸の代わりに見事にリハを踊ってみせる。

リハ後に天は陸に言う。

「リハはただの予行演習じゃない。

本番に向けてスタジオの熱気を上げる、それがボクらの仕事。

ボクらの誠実さに、必ずスタッフもファンも応えてくれる。

体調不良を理由にいい加減なことをしないで」

 

後日、天が陸の寮まで陸を訪ねて来る。

天は、陸と天の両親が経営する店の借金の肩代わりに、2人が13歳の時に養子に貰われていき、「七瀬天」は「九条天」となったのだ。

天は陸に言う。

 

「好きな子、いる?」

陸は単なる恋バナだと思い

「もしその子となかなか会えなかったら寂しい?」

「久しぶりにその子と会う約束をしたのにその子が来られなくなったら?」

という天の質問に

「すごく寂しいと思う」

「悲しいと思う。それに、心配するかな」

と答え、

「好きな人いるの?オレ今、恋愛相談されてる?

どんな人?遠いところにいる人とか?」

と天に質問で返す。

 

それに対しての天の答え。

 

「ボクの恋人はファンだよ」

 

驚きで真っ白になる陸。

 

「ファンを悲しませることはしない。

ファンと交わした約束は決して破らない。

アイドルなら当然のことだよ」

陸「約束…」

「ライブのチケットだ。

その日必ずそこに行ってファンのために笑顔で全力を尽くす約束。

君は約束を守れない。これまでも。これからも」

 

「アイドルとして最低なのはファンを失望させることだ。

九条天のファンでいたせいで傷つくことがあったなんて、ボクは絶対に許せない。

ボクのファンでいたことを後悔させたくない。

いつかボクのファンをやめることがあっても、ボクに費やした時間は楽しいものだったと笑っていてほしい」

 

その上で、天は陸にこう告げる。

「陸は一生懸命ないい子だよ。だけど、この前のライブとリハで確信した。

このままじゃ、陸も陸のファンも不幸になるだけだ」

「ボク達の仕事は代わりがない。

代わりが居るなら、二流の証拠だ。

君が一流を目指せば目指すほど、君は君を支える周りに迷惑をかける。

ボク達は、何人もの人の生活や責任を託されてステージに立つ。

(長い時間をかけてきた周囲の人たちの苦労を)ボクらのミスは一瞬で台無しにする。

その自覚はあるの?」

「隕石が落ちてきて世界中が絶望している時にも、笑って歌っているのがボクらの仕事」

 

 

正直、二次元アイドルからここまでのセリフが聞けるとは思わなかった。

数年前にジャニヲタをやっていた身としては、複雑でもやもやして気持ちの落としどころが分からなかった。

 

 

 

リアルなアイドルより二次元アイドルの方が魅力的ってこんなことあっていいのだろうか?

 

いやいや、所詮、リアルには存在しない作り物の世界のアイドルの言葉でしょ?

 

アイドルとして、これほどまでに自分の立場や役割を自覚している人がかつていただろうか?

 

リアルなアイドルはスキャンダルをスクープされたり、自分を容認してくれないファンはファンじゃなくて構わないと開き直っているかのような態度の人もいるよね?

 

「自分のファンであったためにファンが傷つくことがあったなんて自分は絶対許せない」なんて、生身の人間でそこまでの自覚と覚悟があってアイドルをやっている人はどれくらいいるのだろうか?

 

何度もスキャンダルを起こして、その度に開き直ってファンを舐めているような態度のアイドルも居るのに。少しは九条天を見習ってほしい。

 

 

 

かつて私がファンをやっていたリアルなアイドルは、スキャンダルを起こした時にファンを不安にさせて、ファンは仲間同士で落ち込んだりザワザワしたり泣いたり慰めあったり、グループ内の、問題を起こした人のファンの中でも「グループを脱退しろ」という人と「何があってもついていく」という派閥に分かれ対立し、それはもうめちゃくちゃだった。

担降りする(ファンをやめる)人もたくさんいた。

古くからのファンが担当を降り、あまり過去の事情を知らない新規のファンがまた付いて、「何があってもついて来てくれるファンだけがオレらのファンでいてくれたらいいよ!文句のあるファンはファンをやめてくれても全然構わないよ!」とでも言いたげな、グループのメンバーから発せられる言葉にたくさんのファンががっかりした。

そんな言葉は聞きたくない。

アイドルだって人間なんだから仕方ないけど、せめて周囲に気を配って、大っぴらになったら困るような軽率な行動は謹んで!

そして、もしもスクープされたり世間を騒がせたら、正直言ってファンはとってもツラい心理状況だ。

だから、何かをやらかした後であったとしても、「心配かけてごめんなさい」とファンに向き合ってほしかった。

その一言さえあれば、また信じてついていくことだってできたのに。

 

担降りする前の、ぐちゃぐちゃだった頃のことをいろいろ思い出した。

 

このままファンを続けていたら、きっとまた傷つくことになる。

結局はファンよりも自分が1番大事なんだ。

自分と、自分の仲の良い人達と、自分の欲望と。

軽率な行動によってファンがどれほど傷ついてがっかりして元気を無くしているのか、この人たちは想像すらしないんだろうな。

コンサートを開いたら、当たり前のように満席になってみんなが駆けつけて自分たちを好きでいてくれると思っているんだ、きっと。

好きなアイドルが何をしようと「私だけはずっとファンでいるから!」という人も、まあ居る。

結構、居る。

私は、何度目かのスキャンダルの時、「もう無理。限界」と思った。

同じことを何度も繰り返す。

自分の保身のことしか考えていない。

誰に向けての謝罪だよ。

ファンじゃないよね?

世間を、ネットニュースをお騒がせして、今後の仕事に影響するのが困るから。

そうとしか受け取れない謝罪の言葉しか聞けなかった。

聞きたかったのはそんな言葉じゃない。

今まで好きでいてくれて、応援してきたファンへの言葉は?

あなたの今までをずっと見てきたファンに対して、今、何を思っているの?

どうして、ファンのことを放っておけるの?

ファンが悲しい思いをしていることが分からないの?

 

知人のファン数名も、私と同時期に担降りした。

かつて好きでいた人たちから、こんな形で離れることになるなんて。

でも、これ以上続けても、きっとこの人たちは反省しない。

ファンを省みることはない。

今の自分の恵まれた環境が当然だと思っているから。

 

 

 

アイドリッシュセブン2ndの#5。

九条天の言葉。

 

「アイドルとして最低なのはファンを失望させることだ。

九条天のファンでいたせいで傷つくことがあったなんて、ボクは絶対に許せない。

ボクのファンでいたことを後悔させたくない。

いつかボクのファンをやめることがあっても、ボクに費やした時間は楽しいものだったと笑っていてほしい」

 

ああ、そうだ。

このアニメを観て、心のもやもやが消えなくて、色んな感情が行ったり来たりしたが、分かった。

私は、この言葉を、あの時に言ってほしかったんだ。

私の好きな人たちに、九条天のように。

「自分のファンが自分のせいで傷つくことがあったなんて絶対に許せない」

と言ってほしかった。

「ファンでいたことを後悔させたくない」

と言ってほしかった。

「いつかファンをやめて離れていくことがあったとしても、ファンとして費やした時間は楽しいものだったと笑っていてほしい」

と言ってほしかった。

私が応援してきた人たちは、そんな人たちであってほしかった。

今さらながら、涙が出てきた。

ジャニヲタだった当時のことは、もう、人として嫌いになってしまったかつて好きだった人たちのことを思い出したくなくて記憶の奥深くに仕舞い込んだ。

 

そして、私が担降りしたグループの中で唯一、おそらく、口に出しては言わないけれど、きっと、九条天のようにファンのことを思ってくれているであろう1人のアイドルのことを思う。

他のメンバーは定期的に、本当に笑っちゃうくらい定期的に代わる代わる不祥事やスキャンダルを起こして、その度にファンの間でザワついて不安になっていたが、その人だけは今までスキャンダルや不祥事は一切聞いたことがない。

私生活もまあまあ謎に包まれている。

いつも笑顔でニコニコしている。

メンバーにはよく弄られていたけど、常にアイドルでいてくれた人。

他のメンバーが不祥事を起こして、番組などでメンバーが欠けた状態で人前に出ることになったときもいつもニコニコしてくれていた。

この人の笑顔に何度救われて、勇気をもらって、明日もがんばろうという力をもらったか分からない。

この人がメンバーでいてくれるから、ファンをやめるのはやめようと何度も思い止まってきた。

でも、担降りした。

あなたの横にいる、嫌いになってしまったメンバーが、どうしても画面越しでも目に入る。

歌番組で歌っていると、カメラの切り替えで見たくないメンバーが映されて嫌な気持ちになる。

あなた1人を見たいのに、当たり前だけどコンサートは他のメンバーも一緒に出演する。

総人数4人しかいないグループで、その人以外の3人がスキャンダルや不祥事や、下手したら警察沙汰なことをスクープされているって、異常事態じゃない?

ファンを心配させて不安にさせて、泣いたり動揺したりさせて、それなのにそれについてファンに対して申し訳ないという気持ちたったの一言も、ニュアンスでさえも伝えることができないどころか、あっけらかんと開き直ったようなまるで非難するファンに喧嘩を売っているかのような態度を取るメンバーの顔なんか、もう二度と見たくない。

ファンは鋼の心臓だとでも思ってるの?

何をやらかしてもファンはファンでいてくれると思って放置ですか。

去るファンは勝手に去れば?って感じですか。

嫌いになってしまったメンバーが画面に映るたびにあふれ出る色んな感情を抑えて、心を無にする。

ただ1人、あなたを見たいだけなのに、心を無にしないといけない。

 

あ、無理だ。

ごめん、無理。

私には無理だ。

 

他のメンバーがもし居なくなったら、グループはグループとして成立しなくなる。

だから、いくら問題のあるメンバーであっても、(ひどい言い方だけど)「居ないよりマシ」。

あの人にとって、グループはとても大事。

きっと、ファンと同じくらい大事。

だから。

ごめん、私が降りるよ。

本当にごめん。

好きでいたかった。

もっとファンでいたかった。

ファンをやめるよ。

 

でも。

グループのファンはやめるけど。

あなたを追いかけることもやめるけど。

あなたがいてくれてよかった。

あなたの笑顔は今でも私の心の支えです。

ライブ会場で私に向けてくれたその笑顔は、今でも忘れられない大切な記憶です。

メンバーが最近また1人減っちゃって(私個人は「担降りしておいてよかった」と勝手な安堵をして)、でも変わらず笑顔のあなたを見て、安心と、大丈夫かなという心配と、がんばれっていう気持ちと。

ちょっと離れたところから、あなたを見守って、応援しています。

ありがとう。

 

 

アイドル成長ストーリーの「アイドリッシュセブン」。

生身のアイドルでも一体何人がそんな覚悟を持って仕事を全うしているのだろうかと考え込んでしまう、九条天の意思。

天の発言は、「このままでは周囲の期待に応えられない陸が潰れてしまう」と陸を思ってのことだ。

陸はそれに反発し、やり遂げてみせると宣言する。

今後どうなるのか、目が離せない。