眠たい病気12
『特発性過眠症』と診断されてその後2。
マンガやアニメでちょくちょく見かける、よく寝るキャラ描写にドキッとする。
野球部のエースなのにすぐ寝がち。
取材陣の囲み取材の最中に寝る(立ったまま)。
学校で野球部として表彰されて、部員みんなで壇上に上がって全校生徒に注目されているであろう場面で寝る(これも立ったまま)。
昔、マンガ「スラムダンク」の流川楓もよく寝てて、授業中だけでなく自転車漕ぎながら寝る場面があった。
作者の意図としては『野球(バスケ)がこんなにスゴイのに私生活はやる気ナシ(もしくは豪胆)』のギャップを付けたいのかな。
マンガ的には笑えるんだろうけど、私はあまり笑えない。
もしかして、過眠症の病気があるのでは、とハラハラする。
2人とも一流選手だから試合中以外は寝てても大目に見てもらえるんだろうけど、控えや三軍の選手が居眠りしてたらやる気なしとみなされて退部なんだろうな。
私だって、成績がそれほど悪くなかったから授業中寝てても先生は見逃してくれたけど、下位の方だったらきっと怒られて「授業をまともに聞いてないから成績が悪いんだ」とかみんなに笑われてた人生だったんだろうな。
もしかしたら現在進行形で、眠たい病気の為に寝てしまうのに周囲に批判されたり、ダメな奴とレッテルを貼られて苦しんでいる人がいるかもしれない。
いや、きっといるだろうな。
そんな人たちが、「眠たい病気というものがある」という情報に少しでも早く辿り着けて、正しく診断され治療できて、1日も早く、起きていられる生活を送ることができますように。
眠たい病気11
『特発性過眠症』と診断されてその後。
1つショックだったのは、献血ができなくなったということだ。
この薬を服用している人(=ナルコレプシー又は特発性過眠症の病気持ちの人)は、献血お断りらしい。
理由はよく分からない。
献血中に睡眠発作で寝てしまい目覚めないと困るから?
自分の症状に病名がなかった時は普通に献血できたのに。
献血は、何もない自分が唯一誰かの役にたてることだと思っていたから、かなりショックだった。
あと、眠気に悩んでいたときに検索してヒットしたNPO(特定非営利活動法人)の「なるこ会」に入会した。
その名の通り、ナルコレプシー疾患の本人や家族向けの会だが、特発性過眠症でもOKらしい。
睡眠障害の情報を得るのに「なるこ会」のホームページは役に立ったし、こういう組織はだいたい常に予算不足だったりするので、私が入会しなくてどうするという思いで加入した。
結構ぶ厚めの冊子が送られてきたが、内容に興味はあるのだが読むと眠くなりそうなのでほとんど読んでいない。
(実際に少し読んで寝てしまった笑)
私と同じような日中の眠気に悩んでいる人が、このサイトに辿り着けることを願っています。
眠たい病気⑩
長年悩まされていた眠気に『特発性過眠症』という病名がついた。
肩の荷が降りたというか、とにかく宙ぶらりんな状態を脱することができた。
「モディオダール」という薬を処方された。
必ず飲まなければならないという訳ではなく、眠気の心配のない時は飲まなくていいです。
眠くなったら困る場合や眠くなりそうな時だけ服用すればいいし、そこら辺は自分で加減して飲んで大丈夫です。
先生にはそう言われた。
それに、この薬は少し値段が高いらしい。後発薬は無いと言われた。
計算してみたら、いつも服用している花粉症の薬の点数の5倍だった。
もったいないので、事務の仕事があって眠くなりそうな日以外はできるだけ飲まないようにした。
パソコン仕事は、薬のおかげで眠くなることほぼはなくなった。
でも、パソコン仕事以外の時や休日は薬を飲んでいないので必ずどこかで眠くなる時間が来る。
ああまた寝ちゃった、と後悔する。
しばらくそんな感じで過ごしたが、これは効率が悪いし精神的にも良くないなと、その後は休日であっても必ず薬を飲むことにした。
何が自分の普通の状態なんだかもうよく分からない。
いつも眠そうなのが自分だというのも認めたくないが、昔は確かにそうだった。
中学の時に『眠そうな顔してるかと思ったら急に笑い出したり、変な人』だと卒業の寄せ書きに書かれたっけ。
周囲からしたらそれが私の普通の姿なのかもしれないが、それが病気のせいだとしたら?
人より異常に眠くなりがちな病気があって、その症状が薬の服用で改善されたら、それまでの「いつもだいたい眠そう」というその人に付いたイメージはどうなるのだろう。
もし私に眠くなる病気がなかったら、これまでの人生も今と少しは変わっていただろうか。
今より自分に自信が持てていただろうか。
そんな、考えてもどうしようも無いタラレバを時々ふと思ってしまう。
眠たい病気⑨
検査結果が出たので病院に行く。
異常無しなんてことはあり得ない。
あるはずがない。
こんなに眠いんだから。
でもナルコレプシーである自信はない。
昔、血液検査でマイナス判定が出ている。
診察室に入ると、先生が検査データを見せながら説明してくれた。
一晩寝た方の検査は異常無し。
ナルコレプシー特有の〝寝入りばなにすぐレム睡眠が発生する現象〟は起きていないとのこと。
日中に2時間おきに寝た検査の結果。
普通の人は寝入るまでに8分以上時間がかかるものだが、検査結果ではどの回も5分以内、早い時は1分ちょっとで寝ている。
これは人より異常に眠気が強い傾向があると言える。
診断名 特発性過眠症。
『特発性』とは、「原因不明」という意味。
原因は分かっていません。
でも、治療法はあります。
日中の眠気を改善する薬があるので、それを飲めば眠気は改善されるでしょう。
よかった。
ちゃんと病気だった。
薬も飲める。
これで人並み程度には起きていられるようになる。
本当によかった。
眠たい病気⑧
試験は合格した。
もう1年勉強を続けるのは色々と難しいと思っていたのでホッとした。
数ヶ月が過ぎ、検査の日がやってきた。
夕方に診察してそのまま入院。
病室で晩ご飯を食べ、20 時過ぎに頭に脳波測定の機械を着ける。
終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG検査)というものをやるらしい。
23時就寝。
夜中に病院の外がうるさくて2回ほど目が覚める。
翌朝、8時半に起こされ、頭に装着した測定器はそのままで朝食を食べる。
家の雑用が何もないので、夜中に起きたとはいえしっかり眠れた感じだ。
これから睡眠潜時反復検査(MSLT検査)だ。
2時間おきに寝る検査らしい。
つうか、さっき起きたばかりなんで、多分眠れないのでは?
10時、12 時、14時、16時、18時。
さすがに起きてすぐは寝られないでしょと思っていたけど、10時の時もまあ寝たし他の回もだいたい5分くらいで寝られるのが不思議。
仕事を休んで堂々とたくさん寝られて、今日は満足だ。
検査結果がどうであろうと、この困った症状に対して何らかの対処療法をしてほしいものだ。
何も異常なかったです。
あなたは正常です。
単にあなたの気合いが足りないだけです。
意思が弱いだけです。
なんて放り出されたらもう絶望だよ。
死にたくなっちゃうよ。
眠たい病気⑦
睡眠時無呼吸症候群ではないと太鼓判を押されてしまった。
かといってこのまま死ぬまで眠たい日々を過ごすのは耐えられないと思い、詳しい検査のできる病院を紹介してもらうことにした。
検査の予約をしようとすると、何と4ヶ月待ちとか。
この手の特殊な検査はできる病院が少ないと聞いていたが、本当なんだな。
試験前に眠気に対する薬を処方してもらうどころか、検査もできないということか。
仕方がない。
ひとまず予約だけは済ませて、試験は自力で体調を整えて頑張るしかない。
試験当日。
前日しっかり睡眠を取ったし、試験前に少しだけ食べたので満腹ではなく程よい具合。
後は何とか眠らずに2時間問題が解けますようにと、祈るような気持ちで試験に挑んだ。
恐れていた眠気は、やって来なかった。
よかった。
あとは自分が正解を書けたかどうか。
とにかく1年間の苦しかった試験勉強は終わった。
覚えたり理解したりが苦しかったのではなく、眠気と闘うのが1番、本当に辛かった。
いや、「眠気と闘う」なんて簡単な言葉で片付けられないくらいしんどかった。
自分が眠たい人だったと再認識させられて、恐らく普通の人なら頑張れば何とか頑張れるであろう眠気に打ち勝つことができない情けなさ。
学習室でいつも寝てしまい、「周囲からきっと『またあの人寝てるよ』と思われているんじゃないか」と勝手にコソコソと後ろめたい気持ちになる。
席に座ってものの5分で寝てしまいほとんど勉強出来ないことがあって「自分は何をやっているのか」と自分に対して腹が立つやら情けないやら、それで不機嫌になって周囲に冷たく当たってしまって益々自己嫌悪に陥ったりして、本当に自分が嫌になった。
通院と薬を止めてから、どうしても起きていなければいけない状況がほとんどなかったので、眠いのがこんなに辛かったんだと改めて思い知らされた。
いや、かつての自分もそんな感じで精神的に挫け、追い詰められてどうにも行き詰まった為に勇気を出して病院に行ったんだっけ。
試験は終わったけど、まだこれからも何か勉強はしていきたいし本も読みたい。
映画館やお笑いライブ中にいつの間にか寝ているのも、後から自責の念しか湧いてこないし周囲の目も気になる。
原因がもし分かって治療法があるのだとすればやっぱり治療してほしいと、強く思った。
眠たい病気⑥
仕事が終わって図書館に篭れるのは平日でせいぜい1〜2時間。
帰宅したらご飯を作ったりあれやこれやで落ち着いて勉強なんてできないから、この時間は貴重だ。
なのに、図書館でテキストを読んでいると気がついたら目をつぶって寝ている。
眠気覚ましのタブレットやガムや飴を口にしても、口に入れたまま知らないうちに寝ている。
2時間学習室で過ごしたとして、実質集中できたのはせいぜいその半分くらいの時間か。
こんなことでは埒があかない。
通信教育の教材を取り寄せ、スマホから音声で講義を聞けるようにして仕事中に聞けそうな時はイヤホンで勉強した。
車の運転中も、大好きな音楽を封じてひたすら講義を聞いた。
試験が数ヶ月後に迫ってきたので、過去問を本番の試験形式で解いてみた。
すると、試験中どうしても寝てしまう時間があり得点を逃す。見直しする時間がなくなる。
ひどいと試験時間2時間のうち40分くらい寝ていたり、試験開始5分でいつの間にか目を閉じていたり、ウトウトと眠気と闘いながら時間だけが無駄に過ぎていく有様。
これはまずい。
本当にまずい。
問題を読んでいるはずが、気づいたら目を閉じている。
誰か何とかして!
藁にもすがる思いで、近所の耳鼻科へ行き、睡眠時無呼吸症候群の検査の申し込みをした。
宅配で、自宅でできる検査器が送られてきて2日間測定。
後日、耳鼻科へ結果を聞きに行く。
「異常ないです。呼吸が止まる回数も不整脈も正常範囲内です」
普通なら、患者はホッとするのだろうか。
「じゃあ、この眠いのは一体どうしたらいいんでしょうか?」
半分泣きそうだった。
睡眠時無呼吸症候群でしたと言われた方がまだマシだった。